去年辺りから聞かれるようになった「フルスタックエンジニア」という単語、いよいよ日本でもバズりだしましたね。最新のエントリで言うと以下でしょうか。
なんとも微笑ましいエントリです。例えばアメリカではスタートアップを中心にフルスタックの求人は増えていますが、それがオフショアになどという話はあまり聞こえてきません。しかし気を取り直して、ちょっと見てみましょう。
要するにクラウドでのサーバ構築なんかはオフショアでも技術要件わかるコモディティなのだから、安価なオフショアに取って代わられる、ということのようです。確かに技術のコモディティ化は、両方に働きます。だから、汎用技術に優れたインド人に持っていかれる、というのもありそうに聞こえますね。
まあしかし、この人の持つフルスタック像というのは、最初に説明され尽くしています。
では、そもそもバズってる俺定義を窓から投げ捨てて、初心に帰ってフルスタックエンジニアとは何なのかを確認してみましょう。L.starが最初に聞いたのはpublickeyでしょうか。大体1年前のエントリです。
これを読むと分かる通り、元々はスタートアップ向けで、少数精鋭のチームで何でもこなす飛び抜けて優秀な人材を指していました。記事中Y Combinatorの名前が出てきますが、最近では知らぬ人がいないぐらい有名なVCで、ずば抜けた投資成績で知られています。ここでは起業家に製品開発に集中出来るだけの資金等を与え、集中して製品開発を行わせるといいますが、そういう中でなんとかが出来ませんみたいな言い訳はありえません。必然的に、自ら四番でエースのプレイングマネージャーであることが求められます。単にHTMLからSQLまでフルに分かっている、などという生易しいレベルじゃない、設計からリリースまで全てのフェイズに責任を持てる人材が求められるわけです。
少数精鋭のチームで、しかも全工程を密接にして行うわけですから、多人数が係るプロジェクトで陥るような伝言ゲームとか社内政治などとは無縁の、素早い運営が特徴になります。必然的に、生産性は極めて高くなります。
要は「色んなものが簡単にできるようになったんだから、それを踏まえて全部数人でやっちゃえば凄いことになるよね」ってことです。フルスタックというと「なんでもできる」という点が強調されます。違います。なんでも自分でできちゃうのがフルスタックなのです。そのために、あらゆる基盤要素は、少数のエンジニアがすぐ動かせるように準備されるのが、フルスタックエンジニアを必要とする会社が備えていなければならない要件です。
ちょっとコマンドを動かすと30分でサーバが用意され、1時間でネットワークが整い、3時間で全テストが終了しないといけません。こんなスピード感のある職場でオフショアとかあり得ません。インドの拠点に要件が伝わるまでの間に、必要な作業が全部終わっちゃいます。クラウドを使う強みというのは、このスピード感です。だれでもできるから他人に頼むのではなく、だれでもできるからさっさと自分で手早くやるのです。
それを踏まえて
を読んでみましょう。わりと腑に落ちると思います。
最後に、ちょっと旧聞になりますが
に戻ってみましょう。無責任ワードとしてのフルスタックとは何でしょうか。色んなモノができる、というと野球に例えると内野も外野も守れるユーティリティプレイヤーでしょうかね。例えば運用業務なんかで、小さい組織などではどうしてもあらゆることが出来る人材が必要になるのも事実です。例えば随分昔の求人ですが
などという話がありました。小さな役場には不釣り合いな、多様な技術が必要なのが見て取れると思います。そして実際それだけ無いと業務が回らないでしょうね。こういうところに必要になるのがまさにπ型人材でしょう。
が、説明したとおり、これはスタートアップの求めるフルスタック像とは全く異質で、ただの便利屋にすぎません。よくわからないけど便利な人材がほしい、というのであれば、それはまさに無責任な人事でしょうねえ。
ちなみに、「本物のフルスタックエンジニア」を求める会社かどうかを判別するためには、ひとつの基準があります。それは「高い技術力に裏打ちされスピード感」が無いと立ちいかいない会社かどうか、です。そういう会社は技術がボトルネックなので、必死で優秀な人材を集める必要があり、集めた人材を最大限活用するインセンティブがあります。そうでない会社だと、所詮技術ができても便利屋以上にはなれません。
フルスタックの本来の意味は「何でもできる」ではありません。「何でもやっちゃう」人材なのです。その少数精鋭モデルに最適化した構造が、飛躍的な生産性向上をもたらすのです。単なる便利屋ではなく、四番でエースな超人が求められるポジションですし、会社もそれを雇うための構造を持っていないと、単なる宝の持ち腐れになります。
フルスタックエンジニアもオフショアに脅かされる未来
なんとも微笑ましいエントリです。例えばアメリカではスタートアップを中心にフルスタックの求人は増えていますが、それがオフショアになどという話はあまり聞こえてきません。しかし気を取り直して、ちょっと見てみましょう。
フルスタックエンジニアの複合スキルで触れられているシステムのインフラ構築ですが、基本は日本人エンジニアが担当することが多いです。
理由はいろいろありますが、一番の理由としては「IDCが日本にあるから」。
(中略)
今後はIaas型のクラウドをベースにしたシステム開発が増加すると言われてます。
ということは、Iaasが普及すれば、インフラ構築が地理的拘束から開放されることを意味するわけで、オフショア側がインフラ構築の技術領域に侵食していることを予想できます。
要するにクラウドでのサーバ構築なんかはオフショアでも技術要件わかるコモディティなのだから、安価なオフショアに取って代わられる、ということのようです。確かに技術のコモディティ化は、両方に働きます。だから、汎用技術に優れたインド人に持っていかれる、というのもありそうに聞こえますね。
まあしかし、この人の持つフルスタック像というのは、最初に説明され尽くしています。
昔々、SIerでもフルスタックという言葉では無かったのですが、「T型人材」「Π型人材」になれと言われてきた時代がありました。(今も言われているのかな)
この言葉が今WEB業界から出てきたことに、感動を禁じえません。
π型人材!これを読んで爆笑してしまいまいした。そして今話題の美味しんぼよろしく「明日来てください。本物のフルスタックエンジニアをお見せしますよ!」などと叫ばずにはいられません。
〜翌日〜
では、そもそもバズってる俺定義を窓から投げ捨てて、初心に帰ってフルスタックエンジニアとは何なのかを確認してみましょう。L.starが最初に聞いたのはpublickeyでしょうか。大体1年前のエントリです。
最近よく目にする「フルスタックエンジニア」とは何だろうか?
これを読むと分かる通り、元々はスタートアップ向けで、少数精鋭のチームで何でもこなす飛び抜けて優秀な人材を指していました。記事中Y Combinatorの名前が出てきますが、最近では知らぬ人がいないぐらい有名なVCで、ずば抜けた投資成績で知られています。ここでは起業家に製品開発に集中出来るだけの資金等を与え、集中して製品開発を行わせるといいますが、そういう中でなんとかが出来ませんみたいな言い訳はありえません。必然的に、自ら四番でエースのプレイングマネージャーであることが求められます。単にHTMLからSQLまでフルに分かっている、などという生易しいレベルじゃない、設計からリリースまで全てのフェイズに責任を持てる人材が求められるわけです。
少数精鋭のチームで、しかも全工程を密接にして行うわけですから、多人数が係るプロジェクトで陥るような伝言ゲームとか社内政治などとは無縁の、素早い運営が特徴になります。必然的に、生産性は極めて高くなります。
要は「色んなものが簡単にできるようになったんだから、それを踏まえて全部数人でやっちゃえば凄いことになるよね」ってことです。フルスタックというと「なんでもできる」という点が強調されます。違います。なんでも自分でできちゃうのがフルスタックなのです。そのために、あらゆる基盤要素は、少数のエンジニアがすぐ動かせるように準備されるのが、フルスタックエンジニアを必要とする会社が備えていなければならない要件です。
ちょっとコマンドを動かすと30分でサーバが用意され、1時間でネットワークが整い、3時間で全テストが終了しないといけません。こんなスピード感のある職場でオフショアとかあり得ません。インドの拠点に要件が伝わるまでの間に、必要な作業が全部終わっちゃいます。クラウドを使う強みというのは、このスピード感です。だれでもできるから他人に頼むのではなく、だれでもできるからさっさと自分で手早くやるのです。
それを踏まえて
35歳定年説より怖いフルスタックエンジニアしか生残れない未来とは
を読んでみましょう。わりと腑に落ちると思います。
最後に、ちょっと旧聞になりますが
CTO募集とかフルスタックエンジニア募集とか都合の良いこと言っちゃだめ
に戻ってみましょう。無責任ワードとしてのフルスタックとは何でしょうか。色んなモノができる、というと野球に例えると内野も外野も守れるユーティリティプレイヤーでしょうかね。例えば運用業務なんかで、小さい組織などではどうしてもあらゆることが出来る人材が必要になるのも事実です。例えば随分昔の求人ですが
北海道枝幸町がIT情報技術専門職を募集中
などという話がありました。小さな役場には不釣り合いな、多様な技術が必要なのが見て取れると思います。そして実際それだけ無いと業務が回らないでしょうね。こういうところに必要になるのがまさにπ型人材でしょう。
が、説明したとおり、これはスタートアップの求めるフルスタック像とは全く異質で、ただの便利屋にすぎません。よくわからないけど便利な人材がほしい、というのであれば、それはまさに無責任な人事でしょうねえ。
ちなみに、「本物のフルスタックエンジニア」を求める会社かどうかを判別するためには、ひとつの基準があります。それは「高い技術力に裏打ちされスピード感」が無いと立ちいかいない会社かどうか、です。そういう会社は技術がボトルネックなので、必死で優秀な人材を集める必要があり、集めた人材を最大限活用するインセンティブがあります。そうでない会社だと、所詮技術ができても便利屋以上にはなれません。
まとめ
フルスタックの本来の意味は「何でもできる」ではありません。「何でもやっちゃう」人材なのです。その少数精鋭モデルに最適化した構造が、飛躍的な生産性向上をもたらすのです。単なる便利屋ではなく、四番でエースな超人が求められるポジションですし、会社もそれを雇うための構造を持っていないと、単なる宝の持ち腐れになります。
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