中途半端なグローバル教育に煽られて幼年期に英語を教えるよりも、しっかりとした「日本語脳」を育てるべきだ

という記事が目に入ったので。L.starにも娘がいるが、今のところオランダ生まれニューヨーク育ちという自分とは似ても似つかない経歴の持ち主になっており、子どもの教育という面では色々考えることが多い。

海外在住組はやはりその事情が事情なので、「まずはしっかり日本語から」という上記のURLに沿う形のものと、「せっかくだから海外でしか学べないものを」の大体二派に分かれている。まあ言い争いとかになることはほぼ無いが、みなさん自分なりの考えをお持ちである。

・・・と言うのを考えながら上記を眺めて「ああ、まずはしっかり日本語派の意見でも出てきたかなあ」と見ると、さすがかの東洋経済オンライン炎上事件で有名な原田武夫氏の面目躍如というべき、まさかの右脳左脳論が出てきて飛び上がってしまった。右脳左脳論は、例えばぐぐって出てきただけでも

「右脳派」「左脳派」は都市伝説だった! 人に“利き脳”はない:研究結果

科学的に偽りであることが証明された脳に関する9つの迷信

なんかでもあるように、すでに学説的には完全に否定されている。L.star自身はMind Hacksで読んだが、少なくとも10年前には都市伝説的なものだという話は出てきていたように思う。びっくりするほど今更である。述べられている学説自体も正直それを意識して読めばトンデモが否定されたというだけのことがわかる。ただ、巷の「右脳左脳説」などが未だにあるように、引っかかりやすい理論だなあ、とは思うのでここに記しておく。なにがしかの正しい知見が含まれているかも、という点は否定はしないが、正直STAP細胞のほうがよっぽどありそうに感じる。

さてバカバカしい記事のデマ指摘だけやってもつまらないので、ついでに自分の考える「子供に英語を教えるべきか」論でも余白に残しておこうかと思う。

ちなみにL.star家は中では日本語だが、これは別に「教える当人たちが日本語が一番上手なのだから日本語で」という程度であり、そこまでしっかり日本語をという点を意識したことはない。そしてどのみち外で英語とかは身に付けるのであるから、それはその時プロから学べばいいのである。逆に言うと、これが日本だったら、自分で積極的に英語を教えたかもしれない。

ただそういう教え方をするときにひとつ気をつけるべきなのは、「自分に教えられないものは、どのみち身につけさせることはできない」ということだと思っている。結局のところ、子供は親から学ぶので、親が教えられないようなものを継続的に教えるのは困難だし、お金でその部分を補完するのも限界がある。だから、無理して背伸びして他人の求めることを英才教育する必要はないと思うのである。親が社会が教えられないものは、結局のところ本人が自分の興味で学ぶしか無いのだから。

そういう意味では、結局のところ本人の興味が一番重要で、親が何を教えるかなんてわりとどうでもいいことなのだろう、とは真剣に思っている。親とは、子供の興味を最大限に引き出す存在であることが一番で、それ以上でも以下でもないと思っている。

そんな中で何かひとつ学んでほしいものがあるとすれば、「日本人脳」に凝り固まらない考え方、だろう。欧米で暮らして学んだ重要なことに「日本人はAと考え、欧州人にとってはBで、アメリカ人にはCであることが当然である」のようなことが、そこら中にゴロゴロ転がっているのが世界だ、というのがある。それは日本だけで生きているとややもすれば見逃しがちなものであり、また単に日本人であることを学ぶよりもはるかに難しいことであった。

もちろんすべてのことを学ぶのはよりコストの掛かることなので、必ずしも良いこととは限らない。ただ、自分の目の前にあるたくさんの真実を咀嚼して考えることのできるのは、それ以上に重要な事だと思う。Larry Wallの座右の銘は”There's more than one way to do it”である。それを教えるにあたって、やはりまずはmore than one wayの存在を教えてあげるのが仕事ではないだろうか。世の中には人の数だけ真実がある。日本だけなら1億かもしれないが、世界だと70億なのである。

いやそう言いつつも、真実はそんなに多くないのかもしれないと思うことはもちろんありますよ。少なくとも、原田武夫氏が思っているほとには、ね。