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二十一世紀にふさわしい「頑張る」を考えよう…「若い人たちに時間を気にしないで働いてもらう」騒動の本当の意味

がずいぶん盛況で当ブログの1日アクセス記録を更新したわけだが(とはいえそもそも当ブログのアクセス自体たいした数字ではない)まあ良く書けたなと思う一方で、「あー、これ書いておけば良かった」という部分が一つあった。

それは「二十一世紀の頑張る」の例で、L.starのいるソフトウェア業界に古くから伝わるプログラマの三大美徳、怠惰(Wikipediaでは無精)・短期・傲慢というやつだ。

単語だけ見るとプログラマとはなんとろくでもない職業だ、けしからん!と思うだろうが変な言葉を使うのはいわゆるハッカー的偽悪趣味の表れであって本筋ではない。

本筋の部分は@dankogai氏が昔解説した文章がよかったのでそちらを参照していただくとよろしいかと。

404 Title Not Found: #1 プログラマーの三大美徳その1「怠慢」
404 Title Not Found: #2 プログラマーの三大美徳その2「短気」
404 Title Not Found: #3 プログラマーの三大美徳その3「傲慢」

提唱者のラリー・ウォールの真意の翻訳部分だけ引用させていただくと

  • 怠惰(Laziness)
    全体の労力を減らすために手間を惜しまない気質。この気質の持ち主は、役立つプログラムを書いてみんなの苦労を減らしたり、同じ質問に何度も答えなくてもいいように文書を書いたりする。よって、プログラマーの第一の美徳である。
  • 短気(Impatience)
    コンピューターが怠慢な時に感じる怒り。この怒りの持ち主は、今ある問題に対応するプログラムにとどまらず、今後起こりうる問題を想定したプログラムを書く。少なくともそうしようとする。よって、プログラマーの第二の美徳である。
  • 傲慢(Hubris)
    神罰が下るほどの過剰な自尊心。または人様に対して恥ずかしくないプログラムを書き、また保守しようとする気質。よって、プログラマーの第三の美徳である。

なんと志の高いこと。これがどうして21世紀の「頑張る」の参考になる例だと思うかというと、一つはこういう合理的な考えが根性論が根底にある20世紀型日本モデルと合致しないことだ。根性論は20世紀にそのまま捨ててしまいたい行動哲学だと多くの若者が思っているが、そのためには具体的な代替品が必要で、プログラマの三大美徳のようなものはその候補たり得る。

もう一つはなによりこういうモデルを信奉していないにしろそれなりに実践しているグローバル企業のハッカー群が実際に日本企業を蹴散らしているからだ。

いつもこの話をするときに思い浮かぶのはローマ帝国の三世紀の危機で、日本というかつての覇者で最強の歩兵軍団(言うまでもなく「サラリーマン」のことだ)の持ち主が、外敵の騎兵軍団(グローバル企業のハッカーやMBA保持者のようなエリート)に、機動力で勝てないためにぼっこぼこにされる、というシーンである。日本は平均的なレベルの労働者では未だに最強国家の一角を占めていると、外の世界を見て確信している。しかし時代はアカデミックな訓練を受けたグローバル人材全盛期なのだ。

その点プログラマーの三代美徳は、いかにも21世紀らしい行動規範であり、良く文書化もされているところから今後の我々にとって非常に参考になる例ではないだろうかと思うのである。