ちまたでは新卒採用が大変だという話をよく聞く。L.starも就職氷河期時代に就職しているので、それがどれだけ大変なのかは、ある程度はよく分かるつもりだ。もちろん漏れ聞く話は当時を軽く越えているし、人ごとのように言われてもむかっとするだけだろう。

そんな中で海外就職のように、海外に目を向けるべきだと叫ぶ人たちがいる。それに反抗する人もいる。当然海外就職はビザの問題もあるしハードルが高い。しかし海外就職だけが、世界に目を向ける行為だろうか。もちろんできるならそれが最善だ。しかし、どの国もほしいのは一部の高機能移民だけ。魅力的な国は、だいたいみんな狙っているのだから、競争も半端無い。それこそ国内就職の何倍も大変だろう。

しかし、何も日本にだってグローバルに匹敵するものがない訳じゃない。立派な会社はそれなりにある。背を向けなければいけないのは日本の特定の悪い部分に対してである。今日するお話は、海外にいけるだけの実力も、新卒で最高の企業に就職できるだけの能力もないが、さりとて今までのやりかたにも納得できない、と言う主に大学生の君に、職歴15年のL.starが個人的な経験に基づくアドバイスをしたい。

 

会社は3年で辞めるつもりでいけ

「なぜ若者は3年で会社を辞めるのか」という新書があったが、その題名の逆を行く行動である。3年もたったら、その会社の良し悪しは分かってくる。もし君が優秀な人間なら、だいたいそのくらいで会社を追い越してしまって邪魔になることだろう。また適正があわないなら、そのくらいで先がないことに気付くはずだ。

あわない会社なら、そんなところにかける時間は無駄である。そんなのは辞めてしまえばいいのだ。ただし、適職と思ったなら辞める必要はもちろん無い。

転職がキャリアアップの唯一の手段と心得よ

3年で辞めるつもりなら、昇進は見込めない。というのも、社内昇進は往々にして3~5年ぐらいで行われるものだから。昇進の代わりは転職時のキャリアアップになる。給料は都度相場で決められるから公平だ。ただし、同時に世間の厳しい目でさらされることになる。

もちろん適職な会社で長くいるやり方を取ったら昇進の機会があるが、もしそれを受けるとしたら、「社内転職」と思った方が良い。同じ会社で何かを続けているのではなく、たまたま転職した会社が同じだったと考えればいい。

社外で役立つ知識と人脈が全てである

世間の厳しい目に打ち勝って上のポジションを転職で勝ち取るために必要なのは、社外の人も認めざるを得ないような専門知識と、会社を離れてもずっと役に立つ人脈である。社内政治とコネではない。そんなのは転職でリセットされるのだから、むしろちょっとばかしマイナスでもかまうものか。悪名はどこまでもついて回るから、まあ悪用しすぎるのも良くない。

身につけるべきは英語や科学的教養のような一般的なスキルから専門分野の知識まで多岐にわたる。学び続ける姿勢はいつまでも変えてはならない。なにしろ3年ごとに転職という名の試験があるのだから。

新卒就職活動は捨てろ。あとで挽回できる

以上を勘案するに、世間一般で信じられている新卒という武器は正直ゴミだということに気づけるはずだ。もちろん最初の就職先が良いにこしたことはないが、どうせ3年で辞める会社に最高を求める必要なんて無い。必死で1年2年かけてそのポジションを取りに行くなら、その分は知識と人脈を引き続き磨くのに充てろ。

2年あれば実力を磨く時間が2000時間ぐらい捻出できる。この差は大きい。6年後、3社目に突入するぐらいには10000時間達成できるかもしれない。そうなればあなたはいっぱしのプロである。個人的な観測結果として、新卒社員として入社して同等の時間頑張るにはだいたい10年程度かかる。ということは年間約1000時間というわけで、1,2年の差はきわめて大きいと言って良いだろう。

会社の人になるな、業界の人になれ

会社という単位を絶対視するのをやめたら、業界というもっと大きい単位が見えてくるはずだ。自分を社員と思わず業界の一員と思えば、転職もあくまで業界という共同体の中の異動に過ぎないのだ。そんなに特別なことでもなんでもない。あるいはそれを突き詰めれば業界という単位を越えて日本とか世界というもっとでかいものが見えてくる。でも見えなくてもかまわない。自分の見える、一番大きい範囲で自分という武器を最大限活用しろ。

常に前向きで。そして自分の身は自分で守る

今までの日本社会というのは会社が守ってくれるのが前提だった。しかし、こんなやり方をしていると、はっきりいって会社という組織の中である程度孤立するのは目に見えている。だから自分の身は自分で守る。体調面においても精神面においてもだ。

特に精神面は難しい。自分のモチベーションは自分で高める必要がある。なにしろ転落したら負けの世界。モチベーションを落とす理由なんて、ブラック企業の空気、頭の悪い上司、まともに働かない部下、ゴミのような社内政治、不公平な社会、などなど数えだしたらきりがない。しかし、この生き方をするなら、そんなものに足を取られてモチベーションを落とすことは許されない。とにかく前に進め。

 

 

これ、実は何かというと欧米流ジョブホッパーのやり方そのものである。彼らはこうやってどんどん職を変えていくことで、自分の名声と給料を高めていく。そりゃ最上級エグゼクティブの給料が青天井でも納得せざるを得ない。そして世界と勝負すると言うことは、そうやって自己を鍛えたエリートと闘うことなのだから。それに勝つためには、少なくとも同じだけの努力が必要とされるだろう。かつては、そういう努力の場を一大企業が終身雇用モデルで提供できたのだ。しかしそれがないのなら、自分で見つけ出すしかない。

そして実は日本でもこういう生き方を実践している人はすでにけっこういる。ちょうど9月1日に「Greeに転職しました」だの「DeNAに」だのというのがいっぱい出ていたが、彼らはこういう生き方を実践した結果として、この就職難と言われる中で、いい職にありつけているのである。まだまだ捨てたものじゃない。

 

ひょっとすると、こんな大それたことをやる自信が無い、と言う人がいるかもしれない。そういう人にはこんな苛烈なかりかたよりも、もっとゆるやかな人生がふさわしいのだろう。でもここに書かれている本質はそんなに変わらない。狭い世間じゃなく、広い社会で通用する人間を目指し、あらん限りの努力をしろ。そうすればそれがどんなものであれ、君の居場所がきっと見つかる。いや自分で作り出すことができると言ったほうがいいだろう。

あるいは心ない人が君の見つけたその場所を見て笑うかもしれないが、その人の本当の居場所ほど尊いものは世の中には滅多にない。それが分からないバカこそが軽蔑されるべきなのだ。そういうのはあなたの人生に何の価値ももたらさないのだから、無視して何の問題もない。