前回の
全議席比例代表制度にする前に日本の政党が変わらなければいけないこと
にて、自民党の河野太郎氏の民主主義の権利と義務と言うエントリを紹介したが、そのはてブを見ると「被選挙権行使はハードル高すぎる」という意見が多いのに驚きつつ、確かに一理あると思った。
統計局の資料(PDF)によると地方議員総数は30000超、国会議員に至っては1000以下な訳で、実際候補者になるにもそうとう厳しい試練である。ましてやノウハウや地盤のことを考えると、二世でもない限りほぼ無理か、と思ってしまう。候補者が居ないなら自分が立候補、というのは民主主義の正しい有り様だが、それを実践する制度に欠けていないか、と言う話になってします。
じゃあ逆転の発想をしようではないか。世の中では議員削減が叫ばれているが、思い切って極端に増やしてしまえばいい。例えば国会議員10万人になれば、競争率は1/1000まで上がり、ちょっと優秀な個人で手の届く範囲になってくる。むろんそうなると今までのように高給取りであるわけにも行かないから超薄給になるが、それはそれで雇用対策と言っていいだろう。
まあなんで10万人とか言い出したのかというと、昔
10万人規模の政治家を擁するインターネット国会を実現する – 狐の王国.
を読み、対立エントリの
ネット衆愚制よりネット独裁者
を書いたことがあるからなのだ。ここではL.starは「10万人の国会によるほぼ直接民主制など衆愚制の極み」と批判しているわけだが、しかし多数が参加するメリットも多数あるのも確かだ。例えばそれにより経験を積める層があり、自分を売り出せる可能性もあるわけだ。
今回は大元のアイデアを継承しつつ、しかしそのような衆愚制に陥るのを避けつつも、政治に参加して意見する、と言う形をどう作るかと言うことを考えてみた。すなわち今の政治システムはそのままに、さらに「市民院」を創設して市民の政治参加を促すことだ。
いろいろ決めなければいけないことは多いが、とりあえず簡単に考えてみた通りをあげておく。
- 市民院は、衆議院および参議院の下部組織である。
- 市民院の定員は10万人とする。
- 市民院議員の任期は1年とし、再選を妨げない。
- 市民院には、議長(1名)、モデレータ(100名)そのほか必要に応じた役職を設ける。全ての役職は市民院議員による互選とし、再選を妨げない。
- 市民院議員は、衆議院および参議院議会等にオンラインで参加し、オンラインにて議論する。この議論には、市民院議員の他、内閣や議会等が必要と認めたものが加わることができる。
- 市民院モデレータは、議論の方向性を整理したり、議論のうち重要と思われるものについて抽出したりすることを責務とする。抽出されたものは議会等のディスプレイに表示されるなどして、議員が閲覧できる状態に置かれる。
- 市民院は、衆議院等の求めに応じて、特別の議題に対してオンラインの無記名投票を行う。結果はやはり即時閲覧可能状態となる。
- 市民院の議決は、いかなる法的効力も持たない。
- 市民院議員は、招集され参加した時間に応じた給与を受け取る。
まあ要するにネットのぐだぐたをそのまま政治に格上げするようなものなのである。しかし、きっちり国会を見て、資料を読んだり自分なりに意見を出したりするだけでも、参加している感は全然違うだろうし、実際の政治に対する理解も深まるだろう。その中でも優秀な発言をした人や、役職の経験を積んだ人は、十分経験があるといえ、上のレベルの政治家になる道も開けるだろう。
これは単なるおもちゃだろう、と言う意見もあるかもしれないが、L.starとしてはこれは共和制ローマにおける市民集会に近いものだと考えている。10万人という多数は大衆の縮図である。ここでは特に選挙方法や選出方法を示さなかったが、極端な話ランダム抽出で問題ないとすら考えている。
重要なのは、議決にいかなる法的効力もない、ということである。議会や内閣は、愚かな大衆の言うことに従う必要はない。しかし声には耳を傾ける必要はああるだろう。だから、議会や内閣は市民院を通じてより正確な民衆の考えを知ることが出来るし、市民院に正しく理解してもらうことで民衆との橋渡しにもなるかもしれないと考えている。
一番恐ろしいのは、議会が市民院の議決がそのまま通ってしまうようなスルー組織に成り下がってしまうことだ。むしろ市民院が議会の議決の追認機関になるぐらいでないといけない。とはいえ、法案の可決否決などは駄目だとしても、役職の選任とう、何らかの議決権があっても良いと考えている。
一方で課題の山積み度は半端ではない。簡単にあげるだけでもこれだけある。
- 10万人もの多数のコミュニケーションをどうやって取るのか。動画配信はすでに可能だが、意見を集約することが可能なのか。2chに当てはめれば、一人一発言でも100スレ消費する勢い。
twitterにしても、一時間に一人1tweetで28tweet/秒で、これは現在のtwitterのトラフィックの3%近い。誰かの失言に1秒に5%の人が反応すれば5000tweet/秒、デンマーク戦のゴールも越える化け物っぷりである。 - 衆議院等とのコミュニケーションをいかにして行うか。
- 市民院が衆愚組織に堕する可能性は高いが、本当に国政に影響しないか。あるいは衆愚に陥りにくくする対策はできないのか。
- 市民院議員からのキャリアパスを本当に作ることはできるか。
- 国政に導入するのは良いとして、地方にはどうするか。
- どうやって投票するか。議決権がない、あるいは限定的な故、各種議会選挙ほどの厳密性を持たないオンライン投票で良いのではないかとも考えているが、組織票で埋め尽くされたりしないのか。
- 時間管理、報酬等をどうするか。
最後に自分がそれをやりたいか、と言われると日本にいるならイエスと答えるだろうが、個人的にはむしろそれだけのコミュニケーションを成り立たせるアプリケーションやそのバックエンドを構築する方にずっと興味がある。そういう部分L.starは、残念ながら骨の髄まで技術者らしい。
コメント
コメント一覧 (4)
> そういう部分L.starは、残念ながら骨の髄まで技術者らしい。
政治の話を始めて「やーおれって技術者だなー」って逃げじゃないですか?
ノリがよくてFUDが大得意な人を崇める衆愚制になるだけでしょう。
今と変わらない上に政治参加をしている幻想を見せられるんだから進歩じゃないか!
逃げじゃないですか?
逃げかもしれないけど、いかにまとめるかと言う制度設計、そのために必要なものの整備のほうが、単に参加するよりずっと政治だよ。
こういうことは既存政党に入党するなり新規政党を立ち上げるなり政治圧力団体に入るなりして、一般メンバとしての活動で政策を集約し団体所属の議員に上げて、国会で議論してもらうのが筋だし実際にそうなっている。これこそいわゆる間接民主主義/政党政治と呼ばれる政治形態。
政党立ち上げる気合も圧力団体つくる気合もないのに雇用対策名目で国費から給料もらおうなんてムシがよすぎ。この手の政治団体の財布を国に握られるなんてホラーもいいところ。
これって政党・政治団体を国費で賄う国営組織にしようってこと?
なるほど、確かにそういう表現の仕方はありますね。そのようにはまったく考えてなかったですが。
こういうことは既存政党に入党するなり新規政党を立ち上げるなり政治圧力団体に入るなりして、一般メンバとしての活動で政策を集約し団体所属の議員に上げて、国会で議論してもらうのが筋だし実際にそうなっている。これこそいわゆる間接民主主義/政党政治と呼ばれる政治形態。
それは河野太郎氏が指摘した、あるいは同じ原則を敷衍したとおり。
でも既存団体の無い層に、自分の政策を主張したいなら新規政党作れ、というのは非常にハードルが高いのもまた事実ではないでしょうかね。
現行制度をくずさずにうまく運用するなら、政党やマスコミ等がちゃんと吸いあげろ、という話にもなりますが、それは実行できても明文化されないのが問題。
この手の政治団体の財布を国に握られるなんてホラーもいいところ。
ここが誰にとってどうホラーなのかよく分からない。大政翼賛会化するということかな?