週末はやや体調を崩していたが、頑張って夜のオランダ=スペイン戦を見ていた。勝ったスペインにはおめでとうと言いたいが、しかし・・・

確かに荒れた試合だったが、イエローカード総計14枚というのはいくら何でも多すぎるように思えたし、所々誤審も(しかも重要な場面で)あった。実際スペインは守備陣に隙がない上攻撃も果敢と、確かに強かったし勝つのは順当だろう。しかし素人目にあまり後味の良いものではなかった。

後味が悪いといえば先週末の参議院選挙。twitterで「選挙も後味悪し…」とつぶやかれていったいどんな、と思っていろいろデータをあさってみたが、確かにどうにも解釈しがたい。得票数で勝る民主を一人区でことごとく破るなど圧倒した自民が大勝、と言う結果はいったい何と読めばいいのだろうか。

もちろん今回の獲得議席は決定で、そこに疑義を差し挟む余地はない。違憲だと裁判を起こすことはもちろん可能だが、どうせやり直しにはならない。そもそもそういう戦略が有利になるような制度で投票するのに合意したのは今までの議員で、しかもそれを選んだのは国民なのであるからして、結果に文句を言う余地などない。

問題はやはり、5倍にも達する一票の格差だろう、と言う分析がなされている。それに合わせた戦術を駆使した自民党が勝ったと言うことなのだろうが。選挙戦術の善し悪しが一人一人の票に勝るというなら、いったい何のために投票すればいいのだろうか、と考えされられる。

そんなこんなだからなのだろうか、今回の結果というか過程と言うかには思うところもあった人が多いらしく、選挙制度改革を求める声がブログ界には出てきていたようだ。今は自民党一党独裁体制の昔とはずいぶん勢力も変わってしまっている。次はもっとより世相を反映しやすく、国民にとって受け入れやすい妥協案を探してくれるように、というのはあるだろう。こういった選挙制度改革はそれ自体が国家政党の枠組みを決めてしまうので簡単にこれと決めるわけにも行かない。

どれもBLOGOS仲間(もっとも仲間といってもL.starは末席を汚しているに過ぎないが)になるが、上脇先生の

やはり民意を歪曲する選挙区選挙は廃止するしかない!

が数字がまとまっていて面白い。dankogai氏も

民主党が負けた本当の理由

にて同様の指摘をしている。面白いのは二人とも参議院にて全議席比例代表を、という主張をしている点だ。逆にアメリカ上院や国連議会を範に「格差上等、もっと地方色を高めろ!」という意見も木走まさみず氏の

参議院は「一票の格差」是正を思い切って放棄してみてはいかが

にてみられる。いずれにしても衆参で大きく違う制度を、という点では一致している。

ところで、個人的に以前

オランダの総選挙に学んでみる

で、実際に完全比例代表制のオランダ下院総選挙について学んだ。その中のポイントで比例代表は穏健な多党制に収束しやすい、というのがある。その場合多政党による連立が組まれ、与党内の協議により現実的な落としどころが生まれるということだ。

ここでは仮に今回の結果だけをベースに与党組閣を考えるとして、上脇先生の上記のブログから「各政党の選挙区・比例代表選挙での合計当選者数、比例代表選挙の得票率および比例配分試算議席数」という試算値をお借りして、実際に多政党連立がどのような形になるか検証してみよう。まずはわかりやすいように試算値を抜き出して表にした。

政党名 試算議席数
民主党 38
自民党 29
公明党 16
みんなの党 16
共産党
社民党
たちあがれ日本
国民新党
新党改革
諸派
幸福実現党

これで61議席以上を確保できる組み合わせというと以下のようなものが考えられるわけだ。

  • 民主+みんな+公明(70)
  • 民主+自民(67議席)
  • 民主+みんなor公明+共産(61)
  • 民主+みんなor公明+社民+その他1(61,2)
  • 自民+公明+みんな(61)
  • 自民+みんなor公明+共産+社民+その他2(61,2)

こう並べてみると、かなりあり得ない組み合わせが多く見られるというか、今までの経緯等を考えると、とんでもないと言ったほうがいいだろう。最も鳩山内閣に近い4番目はいまさらないだろう。共産党が与党というのも想像がつかない。そしてみんなの党が民主とは組まない、と言うのを真に受けるなら、2番目の大連立か。あるいはまだまともに見えるのは5番目だが、第一党が野党というのからして普通あり得ない。

ここでいう政権交渉というのは、あらゆる政策案や行動指針をぶちまけて、お互いに「ここはOK」「ここは妥協できない」といったことをいちいち検討するのである。その交渉の中で当然マニフェストにあったことをあきらめないといけないことだって出てくるわけだ。別にオランダにしたところで連立交渉は大変なわけで、選挙から一ヶ月まだ決まっていない。

全議席比例代表の問題というのは、はたして圧倒的な第一党があるのが普通だった日本の政党に、今までのわだかまりと政策の差を乗り越えて政権を樹立するという根気強い行為はできるのだろうか、という点につきる。それができるように変わらなければ、より一層の迷走の度合いを強めるだけである。

又そうなったときには、各政党が、より個性的な、わざわざ選ぶ価値のある特色を持った形に変わらなければならない。どれも同じようでは、結局民衆に見透かされるだろう。もっとも多党制を受け入れられるようになるなら、移ろいやすい多数に働きかけるより熱心な少数をがっちり味方につける方がずっと効率的になるため、そのような流れは加速するだろう。

個人的には、こういう完全比例代表を行うなら、それがより国民の一票を反映するが故に上位にある衆議院にすべきだろう。これにより日本は二大政党制からおさらばすることになるだろうが、与党間の合意による日本全体の合意形成に役立つだろうと考える。他方参議院は完全選挙区(ただし格差はある程度是正する必要あり)として、国民全体の意見が地方の意見に優越する印にすべきである。オランダの二院制に近い形(下院は比例代表、上院が地方議会による選出)と非常に似ているが、若干影響は受けている。

ちなみにこのような制度になった時、空白地帯になっているのはより右翼的な、例えばネットの保守層をカバーするような政党である。今のところ消極的ながら自民党やみんなの党支持となっている層だが、こういったところにマッチする政党があれば現状の不満層をかなり吸収できるだろう。麻生元総理とかがトップになってやらないだろうか?彼ならネット保守層の信望も厚いし、彼らの要望を現実的な政策に落とし込む能力にも長けていると思うのだが。

まあそういう与太話はさておき、他にもいろいろやることはあるだろう。ネット選挙の件もある。想像してごらん?日曜日以外に選挙があることを。では、日曜日以外に選挙を行うことでの会社員フレンドリーなあり方を検討すればどうか、と言う話もした。どの党のマニフェストにも熱心には書かれてなかったようだが、こういった議員と選挙システムと国民との垣根をなくすような選挙改革は是非どんどんやっていただきたいと思うのである。

 

P.S.

今回の選挙後の記事をいろいろ見ていて一番ほっとしたのは自民党の河野太郎氏の民主主義の権利と義務と言うエントリ。現実認識も優れているし、必要な適度な危機感もある。そして民主主義についてもよく分かっている。氏の言う「あたりまえの国会」ができるようになれば、国会は今の迷走から一歩前進できるだろう。このようなきちんとした政治家がいるなら、日本の政治もまだまだ捨てたものじゃない。