Winnyで47氏が逮捕された、高裁で無罪になったと言うことで賑わっている。L.star的には

  • 47氏を有罪にしようというその法理そのものが疑問。あんなのを振り回されたら技術者はたまったものではない。

  • しかしながら47氏がシロだとはとうてい言えない。彼が罰せられないのは法律の不備、あるいは法理の問題、そして「疑わしきは罰せず」という原則に沿った故である。

  • 一連の活動において、警察を含む権力者サイドは、結果として間違った判断を繰り返した。


と思っている。特に最後は致命的である。結局違法コピーは止まったかというと、Noである。しかも、日本における暴露ウィルスの大量被害と、脆弱性のある2.0b7.1のセキュリティフィックスがなかったこと (後で読むと言いたい事と全然違う内容だったので修正。不適切な文章をお詫びします。そして指摘感謝)バージョンアップを妨げることにより暴露ウィルス対策(アップロードフォルダに意図しないファイルを送り込めるという状態を修正する)をWinnyに組み込めなかったことは、密接な関係があるであろう。むしろ彼らこそ明確な意識を持って善と信じることをなしたにもかかわらず、現実問題としては結果は悪だったのである。まあ良くあることだが。

id:KoshianXもこれに関してエントリを出してる。

デジタルデータの本質とWinnyにおける警察の暴走 - 狐の王国.

これはKoshianとも別途ちゃんと話をしたのだが、
警察がすべきだったのは作者を逮捕することなどではなく、解決策を作者に出させる事だった。そのためには警察がわざわざでばる必要など無かったのだ。YouTubeがそうしたように、権利者との話し合いの場を持ち、解決策を協議すべきだったのだ。

この部分には納得できない部分がある。結局のところ、47氏は当事者でもなく、コントロールを主導する立場でもないのだ。解決策を出せる立場にもない。問題はWinnyそのものではなく、もはやWinnyネットワークであるから、どうしようもないのだ。これはNapsterとGnutellaの関係に似ているが、中央集権型のネットワークを持つNapsterのような(あるいはYoutubeのような)仕組みのシステムでなければできない。解決策があるとすれば、それこそ法律やそれに準ずるレベルのものでなければならなかっただろう。「○○機構を持つソフトウェアは違法」のような。むろんWinnyを罰することは現行の法理論ではできない。が、今後の抑止力にはなるだろう。

しかし、もはやデジタルコピーのコストはあまりにも安くなってしまった。それゆえ、どのようなことをしようがこの実態からの後戻りはできないだろう。歴史において、民衆全員に法を強制することなどできたためしがない。長期にわたって権力が他人の行動の自由を奪うこともできない。ましてやモラルなど、今の日本のような治安レベルの高い国家ですら守られやしない代物である。時代が変わるときには、かくのごとく従来のものはすべて無力になる。逆に言うと、それだけの変化が起きない限り時代は変わらないと言ってもいいだろう。あとできるのは、撤退戦か切り込むか、どちらかである。

実はこの影響を一番受けているのはゲーム業界であり、対策が一番進んでいるのもゲーム業界である。例えば古くからあるコピー防止対策はいたちごっこであると昔から誰もが認識しており、あれは純然たる撤退戦である。逆に切り込むのはクライアント無料のMMOアイテム課金とか、広告収入を当てにしたブラウザゲームとか、iPhoneのようなダウンロード販売前提のビジネスである。PSPgoも(現実として成功かどうかはともかくとして)ここの部類に入るわけだ。

大手レコード会社はいずれ降伏する, しかし2011年までは悪あがきする

上のTechCrunchの記事はL.starのお気に入りの一つだが、これが正しければアメリカの音楽業界も現状をはっきり理解しており、しかも撤退戦から反攻の時期までちゃんと考えているというのだ。彼らとて間違った選択をたくさんしてきた(そして、多くの利権をiTunesとiPodによってAppleに奪われた)が、彼らとて馬鹿ではない。長期的なプランはちゃんと練っているのだ。繰り返すが、正しいとは法律でも権力でもモラルでもない。ただ変わりゆく現実に従うこと、それだけなのだ。「勝てば官軍負ければ賊軍」の言葉通りである。

日本の業界はその準備ができているのだろうか。任天堂やSCEは多分準備ができているだろうが、しかし他はどうだろうか。どうせ適応できなければ死ぬしかないのだから、長期的には楽観しているけど。