先のエントリ

オランダに住んでいるからこそ思う、外国人参政権論を考えてみた


に関連して、最近「オランダ 外国人参政権」でググってきている人が増えている。実際に調べてみると8/31時点で20番目ぐらいにいる。ただ、出てくるもののほとんどは、前回のエントリで指摘したようなL.starの住んだことのないオランダの話のようで、きっとオランダ領アンティルか(いや、そういうのもアンティルの人に失礼だが)SFばりばりの平行世界の一つか何かなのだろう。あんな話は全くのナンセンスで、オランダがやっているから外国人参政権賛成というたわごとぐらい短絡的である。実際のオランダ人は、移民とオランダ人とのバランスを一生懸命とろうとがんばっているのが大半である(それでも、イスラム系移民は評判が悪いが:))

しかし、このエントリは、はてぶとかがついているわけではないが、日本人と話をしていると、結構理解してくれない人が多い。だいたいパターンは同じで、曰く「民主党は売国」だの「国籍は必須。取らないやつがおかしい」だの「海外は海外、日本は日本」だの「相手が与えようとしない特権を日本人が与える義理はない」、とかである。L.starの言いたいことの本質は「国際化社会における日本の競争力の維持のために必要なことの一環」な訳でである。それを一生懸命理解してもらおうとするのだが、どうしてか皆さんもっと手前な部分、売国という単語で一生懸命思考停止する。

ちなみに、オランダは昔から海洋国家であり輸出入が社会の重要な部分を担っており、国際的競争のためには外部からの優秀な人材も必須であることをよくわかっている。だから、彼らは「外国人参政権によって国家の危機を迎えている」と日本人から(勝手に)言われている状況でさえ、高学歴外国人の誘致には熱心である(参考URL)(L.starが外国人参政権の話をするときは「優秀な外国人を集めるためにも」とつけているが、むろんスルーされる)

で、日本人がなんでそこに行き着くのかはだいたい予想ができる。日本人の分だけでも足りないのに、外国人に与える義理はない。世界をゼロサムゲーム、あるいはマイナスサムゲームととらえれば全くその通りだ。かつての高度成長ゲームは様々な理由が重なり合って終了し、その付けが大量に残ってしまった今をノンゼロサムゲームと位置づけることは馬鹿である。そしてそんな中、自分の利益を維持するのは、だれにとっても絶対である。例えば国際感覚を身につけつつあるL.starにとっては、逆に日本が国際的になることは利益になる:)

しかし、いつまでたっても日本国内の権益保護の話ばかりなので、だんだんそういう話をするのが馬鹿馬鹿しくなってきた。実際、国際化する社会のなかで、今でも日本製品の輸出は重要な部分を担ってきているし、影響をと利益をもたらしつつある。まだまだ勝算はいくらでもあるはずなのだ。それは欧州にいると、いやほかの外国在住者もしばしば指摘するところなのだ。にもかかわらず、目の前の利益を捨てて、国内だけで守りに入るとかとか、何を考えているのかと思ってしまう。が、彼らは彼らで彼らの視点から見ると正しいことをしているだけだし、世界における日本の位置づけをちゃんと話そうとしてもなかなかうまく伝わらない。もういい加減だめだから説明するのはやめよう、と思ったところでふと思いついた。

いっそのこと、民主党に本当に売国外国人参政権法案通させればいいいんじゃない?いやL.starも民主党がしがらみなく無茶ができる(しかしまあ、それはものすごいメリットである。少なくとも自民党政権はいろいろがんじがらめで、それなりに有能な麻生をもってしてもどうにもならなかった、と言う印象がある)以外いいところのない政党だというのはわかっているし、彼らの言う外国人参政権はL.starの言うそれとは大きく異なっている(まあこれも問題である。なぜなら、L.starがどれだけ国際的な視点を語っても、彼らは民主案だけみて理解したつもりになってしまうから)しかしそれはさておき、民主党が本当に日本を中韓にうっぱらうほどひどい法案を通すことができるなら、日本が単一民族国家として成り立っているという幻想と、をきれいに打ち砕くのに役立つのじゃないか。それでようやく自分たちが「国際社会の一員」であることを理解するのではないか。

言っておくが、L.starは日本の立場を(自分の利益、ひいては全体の利益のために)高めたいのであり、売国したいのではない。世 界に広く目を向け、彼らと如何にうまくやるか、そのために何をすべきかというのを考えるべきであり、それを考えずに日本人の発想だけで無責任なことを言う のが売国行為なのだ。実際「国際的な観点から鑑みて、長期的に外国人参政権には反対すべき」という意見は未だ聞いていない。

確かに売国による犠牲は大変に大きかろう。しかし、今のまま国粋主義が進んで、日本が国際競争力を失って戦争だか虐殺だかに進行するよりはよほどましじゃないか。また、国粋主義な方々はおおむね中国に否定的だが(中国が危険だというのは完全にL.starにも理解できる)、国粋主義で眠りから覚めつつある大国中国に本当に勝てると思っているのか?どれだけ真剣に対峙するつもりだろうが、本気になったら日本単独で中国には勝てないだろう。勝つためには、日本という国の存在をもっと強め、仲間を増やし、対抗できる存在だと世界に知らしめ続ける必要がある。わかっていると思うが、日本の中に味方はこれ以上もういない。いるのは外になのだが。

だから、そういう広い視野の必要性と国粋主義の危険性が分からないのであれば、64年ぶりにがつんと思い知るしかないのだ。そのためなら、民主党の売国は比較的穏やかなものだ。彼らが一番忌み嫌うものが一番の薬になるというのは皮肉なものだ。

売国という単語で思考停止するのは、売国と同罪である。