日本人の同質性はもっと叩かれるべき - 狐の王国.

Koshianに噛み付くのは久しぶりだが、IRCで書くのを約束してしまったので。まず最初に、ここに書かれているようなことは日本にいる間はL.star的には日常茶飯事だったし、欧州に住んでいても「日本人」というくくりで同様の扱いを受ける。

それに対して「俺が変わっているからといっていちいち絡むな」といったところで、何も解決しないのではないか。

たとえば、欧州人と日本人は話題の共通性に乏しいので、「日本はどうなんだ」みたいな話にもっていってくれるのはまあありがたい(欧州人の狙いもそこである)そういうのがあるから、単純に天気とか世間話の類だとあきらめてしまうしかない気がする。たとえば専門的部分においては、知識の莫大な積み重ねなくしては理解できない部分も多いため、どうしても最初の問いはちんぷんかんぷんなものになってしまうのではないか。バックグラウンドがあまりにも違いすぎると、どうしてもそのような大まかなところでしか話がかみ合わなかったりする。

もうひとつ面白いのは、特に体制批判をやるとこれを実感できる。同じ悪口を共有していた相手が、急にポジショントークをはじめ、私の糾弾をはじめるのだ。 このとき私は、体制内批判者から、いきなり体制外の敵に切り替えられる。村八分にされる瞬間である。「同質化」できない人間は排斥されるのだ。ひどい話 だ。

ところで、組織化された社会においてあるていどの同質化は絶対必要である、とL.starは考えている。というか、おそらく自動的にそういう同質化は発生するし、たいていのメリットとデメリットを比べればたぶんメリットのほうが多いことのほうが多いだろう。いや、同質化といわず、「仲間意識の確立」とでも呼んだほうがいいだろう。もうちょっと悪意をこめて呼べば「ムラ社会」である。ムラ社会が必要なのはいいとして、どの程度まで許容されるべきか、とでも言うべきか。

どの程度、というところに目を向けると、koshianの怒りの矛先はまあよくわかるとしても、それを説明する方向が間違っているのでは、となるのではないか。「俺のムラを認めろ」より「俺もムラの一員と認めろ」である。もちろん、口には直接出さず無意識にだとは思うが。そのためには、ムラはより異質な人間を受け入れる形に変貌しなければならない。そのために必要なことは、ムラの構成要員に要求されるものを減らすことである。減らすのは並大抵なことではない。血縁でない人を家族にするのにどれだけの壁があるか。外国人参政権を認めるのがどれだけ大変か。

そしてたぶんここで「いやそもそもムラを拡大する必要はない、十分だ」という人がいるかもしれない。これはしかし外的要因、グローバル化する社会という日本ムラ社会よりずっと強力なムーブメントにより否定される。正確にはグローバル化はムラ社会を否定しない。ただ、グローバル化を認めないムラ社会は、容赦なくグローバル化に押しつぶされるだけである。もっというと、村を拡大するのは有史以来の流れである。常に相手より強力な組織化こそが文明の勝利の鍵だった。

最近ですばらしい一例を示したのがPaul GrahamのFive Foundersである(日本語訳:5人の創業者)ここで、Googleの創業者たち、ラリーとセルゲイの部分を引用しよう。

3. ラリーとサーゲイ


ラリーとサーゲイをいっしょくたに扱うのは申し訳ない気がする。そんなのはフェアじゃないといつも感じるのだが、Googleは彼らのコラボレーションだったと思えるのだ。

Google以前でも、シリコンバレーの企業は最高のハッカーを擁することが重要であることを知っていた。少なくともそう主張はしていた。しかし Googleはこの考えを他のどこよりも推し進めた。彼らが(少なくともその初期において)仮説としていたのは、優れたハッカーがいさえすればよい、とい うことだった。最高に頭のいい人間を雇い、問題に取り組ませ、その成功が測定できるようにしておけば、勝つことができる。そのほかのこと(ビジネススクー ルがビジネスを構成するものとして考えているようなこと)は、追々片付けていけばよい。結果は完璧ではないにしても、最適なものとなる。これが彼らの仮説 だったのだとしたら、今や実験により検証されたことになる。

これはL.star的には、彼らはハッカーを大量に雇って、しかもスケールアウトするような仕事をさせることができた、ということだと読めた。ご存知のとおりハッカーというのは能力はぬきんでているかもしれないが、L.starのようにろくでもない一匹狼がほとんどであり、たいていの場合みんなで集まって仕事をするなどというのは夢物語であった。その組織化の力がどのように威力を発揮したかわれわれはGoogleの「結果」を見ることができる。

かつて日本社会が、欧米人より高い組織化レベルをもってして圧倒的な勝利を築いたのは10年以上前である。それがいまやどうだろう。日本より優れたムラ社会をもった欧米に完全においてきぼりである。

話がずいぶん発散してしまったが、まあ「変人で何が悪い」と怒ってもやはり何も始まらないのである。むしろ「変人を許容しないあなたの態度は、日本社会の発展を阻害している」ぐらいいってやったほうがいいのではなかろうか。