今回の恐慌に対する自動車業界の反応はものすごいスピードだが、たぶんあれだけの必死な対応も未来から振り返ってみれば焼け石に水かも、と思わせるところがあるから大変だ。むろん、それが分かっているから必死なのである。しかし、巨大な経済圏が健全であることを前提に発展して肥大し尽くした業界は、経済の収斂には耐えられまい。数字に根拠はないが、勘としておそらく半分ぐらいかそれ以下の規模まで減り、企業数も相応に、ビック3も当然1社生き残るかどうかぐらいなんじゃないかと思っている。その上、電気自動車やハイブリッドカーと言った、より環境負荷の低い方向にシフトする開発は止められない。

逆に言うと、規模の収斂に耐えられるような体制作りが望まれると言うことだ。むろん現状の大量生産的な分野をいきなり潰すことは現実問題としてやってはいけない類のものなので、ゆっくり且つ速やかな(どっちだ)転換が求められるだろう。それをいかに政府が支援するかと言うことだが、光岡自動車のようなバックヤードビルダーを優遇するのはどうか、と考えている。

このバックヤードビルダーが生産する車を仮にグルーブB車(以下B車)、今までの車をグループA車(同A車)としよう。B車はつまるところ「安全装備も検査も一定基準以下の、少量生産車」であり、以下のような点で優遇を受けられる。

  • 従来よりゆるい製品検査基準

  • 従来より低くて許される安全基準、保安基準

  • 従来より安い税金


こういった点を軽減することにより、開発および取得コストを大幅に減らそうと言うものである。少量生産であるので、当然かなりの部品共有などは避けられないだろう。一方、B車はそういう問題以下のような規制を受ける。

  • 従来より厳しい車検基準(例:毎年)

  • B車運転者に対する厳しい規定(酒気帯び即免許取消、罰金倍額のような強い罰則、免許に対する縛りなど)

  • 生産台数規定

  • 自主規制ではなく、法令による明確な規制(馬力、サイズ、etc...)

  • (おそらく)高い保険料金


B車によって作られるのはおそらくは「スポーツカーなど趣味性の高い車」「独創的なデザインで高性能を目指したもの」「特注扱いの金持ち向け高級車」などの類であろう。こういった多様化が少ないコストでなされるようになれば、ある程度自動車業界のダウンサイジングは進むのではないかと思うのである。むろんコスト高になるのは避けられないだろうが、一方それを抑えるためでより強力なコンポーネント化、規格共通化も進みやすいのではないか。

個人的には、既存の自動車メーカはそのコンセプトからも、B車を作ってはいけない(代わりに子会社にでも作らせろ)と考えている。特にエンジンのような中枢部品はノウハウが相当蓄積していることもあり、既存メーカーはサプライヤーとしての地位も確保できる。まあ現実には販売網もあるので、こうやってできたバックヤードビルダーもメーカーとの親密な関係を当面続けざるをえないだろう。

今の車を見ていて思うのは、なにより画一化が進むことによって、あらゆる装備を満載するような方向に向かっていることだ。これはOSと同じ(なにもWindows Vistaだけの話ではない)だが、全部入りを提供しているために不要なものまで抱え込んでしまって、かえってパフォーマンスを落としてはいないか。また、車種ごとの開発費も、要求が高くなるためどんどん高くなり、管理の煩雑化を避けるために要求そのものを画一化せざるを得ない状況は、正直に言って自らの首を絞めているんじゃなかろうか。

まあ、L.starは自動車業界とはほとんど関係がないので、ここに書いたことが実際に可能かどうかというのを検証できるほどの資料も持ち合わせていない。しかし、このように巨大化した業界のダウンサイジングは、、組織化された大規模開発から再び少数精鋭への揺り戻しということで説明できると思っている。CPU業界がシングルスレッド最重視からマルチコアへと移っていくように、大企業社会から高度に連結された中小企業体社会に移るのは必然で、今がその良い機会じゃないかと言いたいのだ。