なんか書きかけで終わらない記事ばかりたまる昨今、これまたずっと気になっていたことを自分なりにまとめてみた。それは、なぜGoogleやFacebookが、Chrome・SPDYあるいはHipHop for PHPのような新規開発を積極的にオープンでやっているのかということだ。
慈善?そうかもしれない。普及してスタンダード化すれば有利だから?それもそうだ。しかし、もっと重要な理由があるような気がしてならなかった。直感的に、そういうことをすればするほど、むしろ零細ベンダとGoogleの差は開く一方に感じられたからだ。
もちろんクラウド・プラットフォームの構築自体が大規模集約であり、そこで利益を得ることができる。ただそれだけなら、やっぱりChromeをやる必要はない。そこで大規模クラウドを持ったベンダーには、何かそれ以上のものがある。
こういう時に「ザ・プロフィット 利益はどのようにして生まれるのか(リンクAmazon)」をオランダに持ってこなかった(いや持ってきたけど埋もれているのかもしれない)ことが悔やまれる。この本は収益モデルについてなかなか良い洞察を与えてくれる本だったからだ。持ってない人のためには、ザ・プロフィット 利益はどのようにして生まれるのかというエントリで簡単にまとめられているので、見てもらえると良いだろう。経済危機は大きな起業のチャンス!サバイバルマーケティングで社会を変える。というブログでも、詳細解説のエントリがあるようだ。
実際良い大企業は、ここにある複数の収益モデルをうまく組み合わせることによって多大な成果を上げている。ただ、改めて眺めても本のほうが古いせいか、今回の疑問を解くのにぴったりなのは見あたらない。相対的市場シェア利益モデルか?
まあなどと考えていたのだが、L.starなりの結論は「ハードウェアとソフトウェアの性能/コスト特性の違い」である。ハードウェア増強は加算であり、ソフトウェア改善は乗算。むろん当たり前なのだが、これはつまり「ソフトウェア投資の収益性は、クラウドの大きさに比例する」ということになる。
例として10000台のサーバを持つGAEのようなアプリケーションクラウドと、個人ホスティングのサーバ1台とを比較してみよう。単純化のためにハード価格を一律10万円とし、台数増加による効率低下を無視するとしよう。需要が増えて20%の性能向上が必要になった場合、ハードウェア増強でまかなうなら
となる。当然莫大な差がつく訳なのだが、ここで例えばソフトウェアレベルで同等の向上をもたらす革新を考えてみよう。例えばHiphop for PHPはその種のソフトなのだが、C++変換により20%の効率向上が見込まれるというから同等と言っていいだろう。個人ホスティングでこれを経済的に行う方法はあり得ない。10万円ではコンサル1日雇うのが精一杯だ。しかしクラウドベンダなら、これの開発に10億円かけてもペイする。むしろ6億円おつりが来る。
しかもこれをオープンソース化して、有用なパッチが外部から送られてきた場合のメリットも凄い。1%の性能改善が出たら、それはハード200台分に当たるわけで、コスト削減は2000万円。果たしてこんなにコミュニティ運営に使う必要があるだろうか。「我々は有用な技術をオープンにすることによって社会に貢献しています」というお題目など必要ない。
そして、競合に技術が使われることは、もちろん手強い同等のライバルが居たら損だろう。しかし、自分たちが圧倒的なトップベンダーなら、つまりGoogleやFacebook規模なら恐れる必要はない。競合2番手のサーバ1000台もったベンダーはこのオープン技術をもらってサーバ200台分を浮かせることができるが、自分たちは2000台分浮いたわけだから、つまりさらに1800台分差が開くことになる。
もちろんあらゆる技術をオープンにする必要なんて無い。当然社内でだけ有用な、アドホックに近い性能向上手段なんて山ほどあるのだし、本当の切り札は隠していい。
まとめると、アプリケーションクラウドは、ハードウェア台数が増えれば増えるほど、ソフトウェアに対する投資効果が上がるのだ。しかも両方を継続的に進めることでさらに相乗効果がたかまり、小規模ベンダでは手が出ないようなところにまで実施可能になる。今回台数が増えるデメリットを無視するという非現実な例だが、それはあくまでハードによりコストが掛かるというだけであり、投資効果が高まるのはどのみち変わらない。
今までの開発モデルでは、ここでいうハードウェア的なものはSIやホスティング業者が、ソフトウェア的なものはパッケージベンダや、Linux以降はオープンソースコミュニテもがそれぞれ受け持っていた。それが両方を統合することで、より効率的な投資が可能になっている。それがアプリケーションクラウドではないだろうか。
むろん我々利用者にとってはインターフェースが全てなので、クラウドであろうが無かろうがどうでもいい話で、SaaSやSOAというバズワードの置き換えだ、と言う話になるだろう。しかし我々開発者にとってはそうではない、これは新しい垂直統合モデルによる挑戦であると心しなければならない。
これはどっちかというと自分への戒めだが、顧客要望への細かいカスタマイズという従来SI業の最大のメリットが破れたとき、そこに残っているのは高コストで誰も雇う気になれないロートルエンジニア、という悲劇は避けないといけない。そのためには自分の価値を高め、高いことを証明し続ける必要がある。
慈善?そうかもしれない。普及してスタンダード化すれば有利だから?それもそうだ。しかし、もっと重要な理由があるような気がしてならなかった。直感的に、そういうことをすればするほど、むしろ零細ベンダとGoogleの差は開く一方に感じられたからだ。
もちろんクラウド・プラットフォームの構築自体が大規模集約であり、そこで利益を得ることができる。ただそれだけなら、やっぱりChromeをやる必要はない。そこで大規模クラウドを持ったベンダーには、何かそれ以上のものがある。
こういう時に「ザ・プロフィット 利益はどのようにして生まれるのか(リンクAmazon)」をオランダに持ってこなかった(いや持ってきたけど埋もれているのかもしれない)ことが悔やまれる。この本は収益モデルについてなかなか良い洞察を与えてくれる本だったからだ。持ってない人のためには、ザ・プロフィット 利益はどのようにして生まれるのかというエントリで簡単にまとめられているので、見てもらえると良いだろう。経済危機は大きな起業のチャンス!サバイバルマーケティングで社会を変える。というブログでも、詳細解説のエントリがあるようだ。
実際良い大企業は、ここにある複数の収益モデルをうまく組み合わせることによって多大な成果を上げている。ただ、改めて眺めても本のほうが古いせいか、今回の疑問を解くのにぴったりなのは見あたらない。相対的市場シェア利益モデルか?
まあなどと考えていたのだが、L.starなりの結論は「ハードウェアとソフトウェアの性能/コスト特性の違い」である。ハードウェア増強は加算であり、ソフトウェア改善は乗算。むろん当たり前なのだが、これはつまり「ソフトウェア投資の収益性は、クラウドの大きさに比例する」ということになる。
例として10000台のサーバを持つGAEのようなアプリケーションクラウドと、個人ホスティングのサーバ1台とを比較してみよう。単純化のためにハード価格を一律10万円とし、台数増加による効率低下を無視するとしよう。需要が増えて20%の性能向上が必要になった場合、ハードウェア増強でまかなうなら
- 個人ホスティングならマシンを1台増やせばいい。10万で、しかもさらに+80%の余裕までおまけでつく
- クラウドなら2000台必要。つまり20億。もっともそうなると現実には大量購買なりなんなりが可能なので、20%引きの16億かもしれない。
となる。当然莫大な差がつく訳なのだが、ここで例えばソフトウェアレベルで同等の向上をもたらす革新を考えてみよう。例えばHiphop for PHPはその種のソフトなのだが、C++変換により20%の効率向上が見込まれるというから同等と言っていいだろう。個人ホスティングでこれを経済的に行う方法はあり得ない。10万円ではコンサル1日雇うのが精一杯だ。しかしクラウドベンダなら、これの開発に10億円かけてもペイする。むしろ6億円おつりが来る。
しかもこれをオープンソース化して、有用なパッチが外部から送られてきた場合のメリットも凄い。1%の性能改善が出たら、それはハード200台分に当たるわけで、コスト削減は2000万円。果たしてこんなにコミュニティ運営に使う必要があるだろうか。「我々は有用な技術をオープンにすることによって社会に貢献しています」というお題目など必要ない。
そして、競合に技術が使われることは、もちろん手強い同等のライバルが居たら損だろう。しかし、自分たちが圧倒的なトップベンダーなら、つまりGoogleやFacebook規模なら恐れる必要はない。競合2番手のサーバ1000台もったベンダーはこのオープン技術をもらってサーバ200台分を浮かせることができるが、自分たちは2000台分浮いたわけだから、つまりさらに1800台分差が開くことになる。
もちろんあらゆる技術をオープンにする必要なんて無い。当然社内でだけ有用な、アドホックに近い性能向上手段なんて山ほどあるのだし、本当の切り札は隠していい。
まとめると、アプリケーションクラウドは、ハードウェア台数が増えれば増えるほど、ソフトウェアに対する投資効果が上がるのだ。しかも両方を継続的に進めることでさらに相乗効果がたかまり、小規模ベンダでは手が出ないようなところにまで実施可能になる。今回台数が増えるデメリットを無視するという非現実な例だが、それはあくまでハードによりコストが掛かるというだけであり、投資効果が高まるのはどのみち変わらない。
今までの開発モデルでは、ここでいうハードウェア的なものはSIやホスティング業者が、ソフトウェア的なものはパッケージベンダや、Linux以降はオープンソースコミュニテもがそれぞれ受け持っていた。それが両方を統合することで、より効率的な投資が可能になっている。それがアプリケーションクラウドではないだろうか。
むろん我々利用者にとってはインターフェースが全てなので、クラウドであろうが無かろうがどうでもいい話で、SaaSやSOAというバズワードの置き換えだ、と言う話になるだろう。しかし我々開発者にとってはそうではない、これは新しい垂直統合モデルによる挑戦であると心しなければならない。
これはどっちかというと自分への戒めだが、顧客要望への細かいカスタマイズという従来SI業の最大のメリットが破れたとき、そこに残っているのは高コストで誰も雇う気になれないロートルエンジニア、という悲劇は避けないといけない。そのためには自分の価値を高め、高いことを証明し続ける必要がある。