2008年12月

同期の「出世頭」は僕らと何が違うの?


ポール・グレアムが学歴チートの話をしていたが(実力主義は新しいものか古いものか - 腐りきった学歴社会の次は)、さしずめこちらは職掌チートか。そこまでして出世にこだわることの意義を考えさせられる。

いや、本当は偉くなって立派な仕事をしたいというのは多くの人にあるんだろうが、そのために出世に最適化した人間になると言うのは何か違う、と思うひとはやはり増えているのだろう。

こんなの「ばかり」が出世するのを辞めないと、本当にダメになっちゃうよ。

何の気無しに池田信夫blogを読んでみたら、最近のエントリがひどい。

世代間戦争

プログラムされた父殺し

元になったエントリ、ノンワーキング・リッチは比較的まともである。ピーターの法則に従って無能化した人材が高給取りになってしまうという、日本の悲惨な状況を嘆いているだけ。しかし、エントリを追うごとにひどくなっていく。
私の世代は払った以上の年金を受け取れるので、これはすばらしい制度だ。しかし若年世代は、私の世代の最大18倍の税金を負担する。本当は、若者は暴動を起して、フリードマンのいうように公的年金制度を廃止させるべきなのだが、幸い彼らはそれに気づかない。

- 世代間格差より引用

まず、非常に大きな誤解として、今の格差問題は若者と老人の間にあるのではなく、既得権益者とそうでない人の間にある。これは非常によく似ているようで違う。例えば、非既得権益層にある老人は少なくない(ホームレスを見よ)し、若者でも金融業界でぶいぶい言わせてたのは既得権益層である。

そしてなにより、今回の危機は(金融危機のみを指すのではなく、制度疲弊も含めて)国民全員が当たらなければならないものであり、それを世代間戦争にしてしまうのはありえない。池田氏はそれに気づいてないはずはないのだ。にもかかわらず、彼はこう続ける。
私の世代は、そのころには食い逃げしているのでちっともかまわないが、このまま「景気対策」でごまかしを続けていると、今の30代以下には地獄のような老後が待っていることは覚悟したほうがいい。父殺しのエネルギーは、暴力革命以外の方法で使うこともできる。

-プログラムされた人殺し

暴力革命を肯定しないところはほっとするが、相変わらず「父殺し」つまり世代間格差を解決する手段としての何らかの(非暴力的な)闘争を推奨する。煽って日本全体が共倒れになったところを漁夫の利を取る誰かの存在から金もらってるんじゃないかと、陰謀論的にでっちあげたくなるぐらいだ。

繰り返すが、今回の危機は本当にやばい類のものだ。本当に必要なのはその危機意識を全員が共有し、一丸となって当たることである。まるで戦争を思い立たせるが、相手が軍隊でないだけで大危機なのは同じである。たぶん、今回得する人はほとんどいず、むしろみんな損をするだろう。しかしそれでも、生き残れるだけましというものだ。

一丸となって当たりたいのなら、まずは危機対応に対して非協力的な既得権益層に対して(協力的なのは良い)不名誉なレッテルを貼ってしまうのが一番良い。「世界的な危機だというのに、自分たちの利益ばかりを考え前向きな行動をしない」というのを一言で表せるのがいい。既存の団塊とかそういうのは、残念なことに既得権益層全体をうまく表す単語ではない。世代間闘争ではないしあってはいけない。

第二次大戦は「非国民」という良い単語があった。小泉総理の「抵抗勢力」もその類だろうか。彼はこの種のレッテル貼りが上手であった。残念なことに今回はマスコミの援護はない(彼らは現在レッテルを貼られる側である)が、ネットは見事に代役を果たしてくれるだろう。

その単語はなかなかうまいものが思い浮かばない。「勝ち逃げ」では良い印象を与えてしまう。「年金泥棒」では趣旨が変わってしまう。「逃げ組」はどうだろう。

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しかし、これだけ持論を繰り広げてみても、池田氏がもしここを見たら何と思うか、ほぼ想像できる。

「甘い」

いや、たぶん甘いのだろう。自分でも分かっている。民衆はそれがどれだけ差し迫っていても、見えない恐怖に対して団結はしない。どれだけまずいことになっていても、目の前の臭いものに蓋をすることでなんとかなるのなら立ち向かったりしない。

でも、それを皮肉めいてせせら笑うだけでは何も生まれやしない。全員の可能性を信じて前を向く、それがこの時代に必要なことではないか。今混沌と騒いでいるところには力があるが、それを方向付けるリーダーに欠けているだけである。

・・・さらに「甘い」と言われそうな内容だな。まあ、悲観的な内容は他の人に任せて、時には前向きな愚痴でも語っておこう。

当初日曜日朝->月曜日朝と聞いていたマシン復旧が午後すぐぐらいに終了していた。

ありがとうございました>休日出勤してマシンを上げていただいた方

ポール・グレアム「学歴社会の次に来るもの」 - らいおんの隠れ家.

ポール・グレアムは、多くのハッカーに影響を与えられる素晴らしい文章を書いている。L.starも例外ではなく、彼の文章が翻訳されるのをとても楽しみにしている。翻訳をしていただいている方々に感謝したい。

それはさておき本題である。グレアムはまず「子供に学歴を取らせるためにどのような手段もいとわない人」に対して何らかの手を打つべきだ、と言っている。

L.starも「学歴社会は絶対悪」と思ったことはない。しかし「学歴社会に最適化した行動を取る」ということは、とてもとても恥ずべきことだと思っている。それは事実上公認であろうが無かろうがチートである。そして、この種のチートを平然と行って罪悪感をいっさい持たない人間の多さに辟易している。

原則論として、学歴社会において学歴を測るのは、人間性を計測する一指標として測るのである。本来計測すべきは人間性であり、学歴ではない。グレアムの言う「学歴のハック」というものがどのようなものか見ればいい。まさに教育ママが狂喜乱舞している様と同じではないか。

そして、このような「学歴ハック」で出てきた子供がどのような行動を取り、社会にどのような弊害を与えるか? L.starはそれを「ゆとり」に見ている。いわゆるここ数年問題になってネットで揶揄されている「ゆとり」連中は、Wikipediaもまとめられているが、ゆとり教育を全面的に受けた世代ではない。彼らはこれから就職に面する。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%86%E3%81%A8%E3%82%8A%E4%B8%96%E4%BB%A3

それどころが、ゆとり教育直前の、むしろ受験の荒波にもまれた世代である。彼らが厳しい進学競争から一体何を学んだのか、と言う話である。

L.starは直接そういう世代と仕事をする機会が得られなかった。が、聞くところを総合すると、彼らの動く様は、巧妙に社会の弱点を見抜き、その中から自分の利益をいかに最大化するかに注がれている。馬鹿ではあそこまで完璧になれない。「ゆとり」は、本当は社会ハックによって自己利益を得られるほど賢いのだ。にもかかわらず正しく動機付けされていないため、ああいう一見馬鹿げた行動を取る。あれはゆとり教育の産物ではなく、学歴ハックによってもたらされた低い人間性世代じゃないかと思うのだ。

話を戻そう。グレアムはその「受験ハック」対策として、2つの方法を提案している。

  • 学歴ハックに利用できる「穴」をふさぐ

  • 学歴重視社会から、より実力重視社会に移る。


全く個人的な意見であるが、ゆとり教育こそ、実際には無惨にも失敗しているが、この後者を目指したものであったのだ、と思っている。ゆとり教育の最大の欠点は、子供のためには学歴ハックをもいとわない親たちの性根をたたきのめすほど強くはなかった。と言うことなのである。その覚悟がなければ、今後も同様の政策は失敗するだろう。

ちょっと「ゆとり」に脱線しすぎているので話を戻そう。グレアムが描く実力重視社会は、彼が支援するベンチャー的なものである。つまり、規模が小さければより実力を判断しやすいというものだ。全体の見通しを正しく得ることが、がごく一部の超有能な個人/小集団にしか出来ないような大組織では、学歴のようなわかりやすい指標を持たなければとても無理である。ところが小組織ではそうでもない。せいぜい数十人であればそれほど難しくもないのだ。

グレアムはこの「ベンチャー向き実力主義」を「世襲」「学歴」に続く新しい時代だと評している。ただ、個人的にはこれをそう結論するには2つのパラメータがかけているのではなかろうか

  • 誰が実力に見合った報酬を払うのか

  • これは、単なる大規模-小規模の循環的な戦いの一環であり、最終的な解決策ではないのではないか


前者については、ベンチャーによるアメリカ企業の反映が空前の好景気に支えられており、なおかつそれが崩壊の危機に瀕していることにある。もしこの実力主義がアメリカ経済とともに崩壊すれば、それは単にきわめて良くある「好景気によって存在しうる贅沢な制度」の一つであったことに過ぎないことにある。むろん、グレアムは彼の経験に基づき、それを肯定しているのはよく分かっている。L.starのような一匹狼的気質のハッカーにとって、彼が提示するベンチャー的企業がどれだけ魅力的なことか。

後者については、前回の

巨大になりすぎた自動車業界が死につつある - 処方箋はスリム化の推進

にもつながる。巨大化した組織が連携して動くことはかつてとても重要なことであったが、それが重要であると認識されればされるほど組織化が進み、それが行きすぎると今度は小規模の小回りの良さが良くなってくるように世界は循環する。むろん、個人的には「より高度な組織化によるさらなる大帝国としての統合」という崇高な使命が実現すればいいのに、と思わなくもない。それは間違いなく今後人類がさらに生き延びて発展するための最大の武器になるのだ。しかし残念ながら、それを行うことのできる偉人は、今の所世界に登場しそうにない。となるとやはり、金融帝国パクス・アメリカーナやジャバニーズ・ビッグカンパニーは今崩壊し、より小規模な組織に移行するのか。

また、実力主義社会においてもハックは存在しうる。現状の欧米式エグゼクティブの超巨額報酬など、「実力のハック」の最たるものではないか。結局「評価ハック社会」になるのが避けられないのであれば、これは新しい形式でも何でもなく、単なる社会的ハックに対するパッチの一つに過ぎない。

不況になったからと言ってみんな負けるわけではなく、当然「勝てる」グループも存在するわけだ。自分が「勝ち」たいなら、そのトレンドを読み損ねないように気をつけないといけない。少なくともIT業界において、数万人月の大規模開発より、十人程度の小規模精鋭開発のほうが圧倒的に効率が良いことはほとんどのエンジニアが同意することだと思う。しかしにもかかわらず今まで大規模開発が優勢であったのにも当然理由がある。だから問題は「いつそれが逆転するか」である。そのときに正しい側にいることがチャンスになる。

publishToMixi1.3に上げる。改良点見て、果たして2.1とかで動くのかどうか心配になるが、無論ダウングレードしないので気にしない。いいかげんソースコードにパスワード直書きするのが嫌だ。確かにmysqlに入れるのもどうかと思うが。

とりあえずテスト投稿。

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