いつの間にやらもう2011年も終わり。今年は誰にとっても本当に大変な年であったと思うが、特に日本では原発事故を発端として放射線の健康被害とエネルギー問題についての議論がホットだった。ただ、議論の内容が玉石混淆どころではないぐちゃぐちゃで、中には傾聴に値する貴重な意見ももちろんたくさんあったが、聞けば耳が汚れるとまで言わざるを得ないようなゴミもまた多かった。恐怖と憎悪で、冷静な深い議論が出来ないのは大変なマイナスである。

そこで年の瀬の今、そんな今年こそ読んでおきたい本をいくつかtwitterで紹介したが、そのうちの3冊をここでまとめておきたい。

文明崩壊

これはジャレド・ダイアモンドの名著「銃・病原菌・鉄」の続編とでも言うべき本で、文明が崩壊するプロセスを最新の研究結果を基に丁寧に描き出している。

まず彼の住む現在のアメリカの鉱山・鉱毒問題や石油企業の操業状態に始まり(この辺は残念ながら若干くどい)イースター島・ビトケアン諸島アナサジ族の遺跡・マヤ文明グリーンランド(バイキングによる入植)などといった「過去の滅亡した文明」についての章がある。ここは実に面白く、歴史が好きなら必読とも言えるだろう。特に従来しばしばオカルトめいて語られていたイースター島やマヤの問題を何の陰謀も無しにきっちり説明するあたりは本当に圧倒される。

また逆に破滅を防いだケースもニューギニアの高地や江戸時代の日本なども紹介され、その違いは「致命的なリソース(主に食料)不足に陥るかどうか」であることだと指摘する。そして翻って現代はどうか?と話は進む。人口爆発中のアフリカ・自然調和と破壊の好対照をなす一つの島の2つの国ドミニカ/ハイチ・中国・オーストラリア・・・

最後に将来で締めくくられる。我々の文明社会は高度化し、成長することにより沢山のリソースを必要としてきている。例えば爆発する人口しかり、化石燃料や電気といったエネルギーしかり。これは先の歴史に学ぶなら「危険なフラグ」である。そして氏は自身のスタンスを「慎重な楽観派」という。それは「確かに人類の未来は悲観的ではあるが、十分に慎重に行けば乗り越えられないほどではない」と。

神々自身

アイザック・アシモフのSF長編復帰第一作で、「理想のエネルギー」エレクトロン・ポンプと、それにまつわる3つの立場の人たちを描いた長編である。ヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞といったSFの有名賞を総なめにしたいわゆる「トリプル・クラウン」の称号を持った名作である。「愚昧を敵としては神々自身の戦いもむなしい」というシラーの句が元になっている。

もともと中編を書くつもりが暴走していき長編になってしまった、という経緯もあってか、全3部は割と独立した構成で、登場人物もかぶらない。特に第2章は異星種族のセックスなんかが書かれていたりしていてなかなか斬新である。

この「理想のエネルギー」なるエレクトロン・ポンプは、安全かつCO2排出も無い原子力発電とかぶるが、実際そういう意図なのだろう。「エレクトロン・ポンプの父」フレデリック・ハラムはまあ御用学者と腰抜け政府を合わせたような小心者のろくでなし、掛け値無しのクズであり、「エレクトロン・ポンプ」には人類を滅亡させる致命的な欠陥がある。反原発派の人などは感情移入しやすいだろう。まさに「傲慢な権力層と闘う正義の味方たち」という構図だ。

だからこそこの本を読むときに「なぜアシモフは3部まで書かなければいけなかったのか」と考えて読んでほしい。クズの小心者のもたらした欠陥テクノロジなど粉砕されて当然!というだけならそうする必要はなかったのだ。彼がこの「ポンプの欠陥」に対して与えた解法こそ、彼の哲学をもっとも良く反映している。だからこそ、彼はそこまで欠かざるを得なかったのだろう、と個人的には思っている。

ねじまき少女

 

神々自身が初期の三冠だった(このころは割と連発している)のに対して、最新の三冠受賞作がこの「ねじ巻き少女」で、ビジョルドの「影の住む城」以来7年ぶりの快挙を成し遂げた。これも独特のエネルギー世界観を持った作品でこれほどのオリジナリティは「ニューロマンサー」以来との呼び声も高い。

「文明崩壊」を読んだらもう目の前に見えてきている石油枯渇後の世界を描いた作品で、独特の「ねじまき」や遺伝子操作された動物・新人類といったギミックが実に魅力的な作品。舞台は未来のバンコクだが、下敷きにしているのは現在のバンコクの政情に近い。去年の暴動やタクシン元首相、国王や今年あった洪水の話題などについて勉強してから読むとさらに楽しめるだろう。

特に何を気をつけることなく普通に読んで楽しんで良かった、で良いと思うが、本書後書きにもあるとおり震災後だからこそ、この深刻なエネルギー危機と向き合った世界観を持ったこのSFが何とも言えず心に響くのである。これは避けるべき未来ではないのか、と。

最後に

L.starはこれらの本を「結論を共有するために」紹介するのではないし、そのように読んでほしいと一切思っていない。自分の意見を「考える」ために重要な助けになる本と思っている。

考えた結論が一つになるとは限らない。なにしろエネルギー問題は解答のない、複雑でめんどくさい話だから、簡単な結論も出るはずがないのである。だからこそ安直な意見を排し、理性的な結論に導くためにも「考える」ことが今極めて重要だと感じている。

まあでもなにより、そんな堅苦しいことを言わなくとも楽しい本であることは保証する。その上で考えることがあって、あなたの意見の裏にある論理を深くする手伝いになったらこれ幸いである。

PostgreSQL Advent Calendar参加作品です。

ネタはいろいろ考えたんだけど、例えばnode.js+plv8jsでjavascriptだけで遊ぶとか、なんかちょっとしたライブラリ書くとか、アイデアはあれど風邪を引いて実行力がないので手抜きにしました。単にpgbench取りました。

ただし手元にあったwubi+ubuntu8.10(新しいバージョンは何故かうちのマシンで動かなかったので何故か古い)でコンパイルできるバージョンを片っ端からインストールするというネタをかましました。本当はWAL導入前の6.5までいきたかったけど、7.2でpg_hba.cがエラーで入らず、直そうかと思ったが手間をかけたくないし断念。

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SF・ファンタジー作家のアン・マキャフリィが先週お亡くなりになったと聞いて大ショックの一日だった。Steve よりDennisよりショックというと言い過ぎか。

訃報:米作家アン・マキャフリーが死去


マキャフリィ、というか私的には「アンおばさま(といっても85歳だし、L.starが彼女の著作に触れた頃にはもう60代だった)」はスペック的には最初にヒューゴー・ネビュラ両賞(中編部門)を取った女流SF作家のはしり、と言う紹介になるが、稀代のストーリーテラーという印象が強い。とにかく力でぐいぐい押して読ませる作風。科学的考証はそこそこできているが、小説としての伏線の張り方とかに難があるというか、わかりやすく配置して回収するふりすらしないフラグクラッシャーぶりが見受けられる。そんな大味な作風が大好きでした。

そんな大御所のご逝去を悼んで、ちょっとした紹介エントリを起こすことにしました。

 

代表作としては「パーンの竜騎士」シリーズ。あまりにも多いので1巻だけ貼っておく。ちなみに今年映画化が発表されている。

糸胞が定期的に降る惑星パーンを舞台に、遺伝子操作で作られた竜とその乗り手を中心に繰り広げられる一大シリーズ。ファンタジー色の強いSFで、どっちか一つに決められないのが特徴である。「竜の挑戦」で一応完結しているが、外伝、サイドストーリーを含め展開している上、息子トッドが後を継いで書いているので、これが読めなくて残念!ということはない。

なお、ハヤカワ文庫では「アダルト三部作」と「ジュブナイル三部作」という区切り順で発刊しているので、原書刊行順とは異なる。読むときは原書刊行順に1,2,4,5,6,3巻と進行することをおすすめする。その先は刊行順に読んで良いが、進むにつれクライマックスへとまるで週刊誌の連載マンガのように話が発散していく。そこもご愛敬である。

私的ベストはメノリが主人公の4巻「竜の歌」と5巻「竜の歌い手」の二部作。


たぐいまれなる才能を持ちながら、環境に阻まれうまく生かせない主人公の葛藤とサクセスストーリーは、社会に閉塞感を感じながらもそれを打倒したい若者の心に結構刺さるだろう。特に竜の歌い手のほうは、L.starが前に進んで頑張らないといけないとき、いつも心の支えになった一冊だ。絶対おすすめ(だが、単体で読んでもありがたみは薄いので全部読め)。

おばさまのフラグクラッシャーぶりはこのころから健在で、3巻「白い竜」のきっかけとなる非常に印象的な、どうみても次巻の主人公決定イベントとしか言いようのないすばらしい描写が2巻「竜の探索」にあるのだが、実は単に書いただけで続編は考えてなかったとか。ありえない!!!!

 

次は「歌う船」。TRPG「トラベラー」とそこはかとなく似た世界で、女性の脳を移植された宇宙船と宇宙船乗りの物語。これも1作だけ。

なお初期の作品である一作目以外は若手との共著。共著者にはヴァルデマール年代記のマーセデス・ラッキー、マジカルランドシリーズ(故ロバート・アスプリンと共著で、現在引き継いでいる)のジョディ・リン・ナイ等々、錚々たる面々が含まれる。それゆえ作風がかなり異なるのだが、それが世界観に深みを与えている。

個人的ヒットはそこはかとなくラブストーリー仕立ての「旅立つ船」。ラストは泣けます。

それから「九星系連盟」シリーズ。

短編「等のなかの姫君」あたりと初期の「ペガサスに乗る」をベースに作られたエスパーたちが恒星間の物流をになうという一風変わった世界のお話。主人公家族が全員強力な超能力者という設定が非常に強力で、他種族とのコンタクトとか見るべきところがいっぱいあったはずなのだが、2度読んでるのにある種ほのぼの家族物語という印象しかない。

おばさまは多作な方だったのでほかにもいろいろあるが、日本語で読めるところはこんなところだろうか。とにかく物語を語るのが好きなんだろう、というのが小説からも漂ってくる希有な作家でした。天国でもきっと執筆されるのでしょう。死後天国での新作が読めるのが楽しみです。

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